何もしてくれなくていい、
ただいてくれるだけでいい、
とだれかに言いたいときがある。
裏返して言えば、何をするわけでもないが、
ただ横にいるだけで他人の力になれることがある。
(中略)
なかでも、教育やケア(子育てや介助・介護)は、
その相手である一人ひとりの思いに濃やかに
耳を傾けることからはじまり、
また相手がいつの日かみずからの足で立つ、
みずからを立てなおすのをじっとまつ、ということが
とくに大きな意味をもついとなみである。
が、それの「評価」にあたって、
どれだけ耳を傾けたか、
どれだけ辛抱づよく待ったかということが
カウントされることはめったにない。
(後略)
~「大事なものは見えにくい」
鷲田清一 角川ソフィア文庫より 抜粋~
今日から2021年のレッスンが再開。
高1のKちゃんに鷲田さんのエッセイの
「受け身でいるということ」と題された
一節を読んでもらった。
鷲田さんの哲学エッセイは、大学入試の
現国の問題としてもよく採用されているようですが、
目まぐるしく変わる現代社会の日常に芽生える、
心のひっかかりを鋭くも優しく語る鷲田さんの文章に、
テストを離れたところでは高校生がどう向き合うのか、
とても興味があります。
この節のタイトルは「受け身でいるということ」なので、
あなたにとっての受け身でいることはどういうことなのかを
600~800文字くらいで書いてもらうのがレッスンでの課題。
まずこの内容について、自分がどう思ったかを聞くと、
Kちゃんは開口一番、
「何かね。この話、私にとってはJUNKOだと思った。」と。
私、「え?どうしてそう思った?」
Kちゃん「だって本当によく聞いてくれるよね、私の話。
ものすごく話しやすいんよ。」って。
そんなことを言われるなんて予期していなかったから、
本当にびっくりしたよね。もう・・・泣けるやん。
嬉しいよ、ありがとう。
家族がいて、
友達がいて、
学校の先生がいて・・・
そのどこにも属していない私という人間が、
鷲田さんの言葉を借りれば、彼女の巣立ちまで
彼女の言葉に耳を傾けながらずっと待っている、
というこの世の不思議。
週に一度も6年となれば、重みあるなあ…
しみじみ。(ここ読んだら、彼女は吹き出すかも
しれないけど、笑)
私の心の中で人生の宝物が確実に静かにカウントされた音が聞こえた。
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育てよう、心。
積み上げよう、言語力。
伝え合おう、自分の思い。自分の言葉で。
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